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全米で起っているデモの実態_ジョージ・フロイド氏の理不尽な死と人種問題に迫る

 

 

全米を巻き込んだデモの原因とは

 

 2020年5月末からアメリカでは、人権と差別問題に対して大規模なデモが起こっています。デモの原因は、5月25日アメリカ・ミネソタ州で発生した事件です。事件は、警察官がアフリカ系・アメリカ人男性の首を8分以上抑えて心肺停止状態で殺害した罪で起訴されました。アメリカだけに止まらず、イギリスやオランダなどのヨーロッパ圏、プエルトリコなどの北中米にもデモは広がっています。

 

人種差別によって、アメリカに住む多くのアフリカン・アメリカンが苦しむ中で、今回また警察官が職権を濫用して人の命を奪ったとして大きな問題になっています。殺人罪として関与していた警察官4名が法律で裁かれるべきである事、人種差別がなくなる事を多くの人が願ってデモに参加しています。

 

 

 

事件の詳細

 殺害された男性 ジョージ・フロイド氏(George Floyed)は、当日街の小さなストアでタバコを購入して車に戻るところでした。ストアで勤務していた従業員が警察にフロイド氏が偽造した20ドル札を使用した疑いがあると通報した事で、警察官が現場に駆けつけた様です。

 

警察官に尋問されて抵抗する姿勢もなかったフロイド氏ですが、警察官は身柄を拘束するためにうつ伏せにして抑えていたと主張しています。8分間以上、うつ伏せの状態で男性は抑えられていて、『息ができない』『抵抗しないから離してくれ』と訴えていたにも関わらず警官はその声を無視して男性の首の辺りを膝で押さえ続けました。

 

その時、現場には4名の警官がいて現場の確保や周囲の警戒をするだけで、男性を警察署に連行する行為も見せず、ただフロイド氏の周囲を固めていました。時間が経ち、とうとう男性が動かなくなった時に駆けつけたのが救急車でした。病院に運ばれた後、フロイド氏の死亡が確認され、2回の検死結果はどちらも他殺となりました。

 

警察官は明らかに男性を苦しめる意図があって押さえつけていたとして、NewsやSNS上で大きく取り上げられました。現在、4名の警察官は裁判にかけられています。当事者の警官は第3級殺人罪と第2級故殺罪で起訴され、他2名は第2級謀殺罪(殺人補助)で起訴されています。

 

2級殺人ならば最長40年の実刑、3級ならば最長10年間になるようです。最初は殺害の疑いがある警官のみ解雇になりましたが、デモや世論が大きく訴えていることもあり、4名共に解雇になりました。あとは、法廷での正義を遺族達は祈っています。

 

 

 

  フロイド氏の家族の弁護士を務めるベンジャミン・クランプ氏(Benjamin Crump)がtwitter上にフロイド氏が逮捕された時の映像を(隣の店の監視カメラに写っていた)公開しました。"明らかに抵抗する意思を見せなかったフロイド氏に対して、警察は過度で暴力的な捕捉をする必要はあったのだろうか"と強く訴えています。その暴力的な権威の執行がフロイド氏の死につながったことは間違いありません。

 

ジョージ・フロイド氏の経歴

 

 殺害された46歳のジョージ・フロイド氏はテキサス州・ヒューストン出身です。過去に逮捕歴もありますが、5年間服役後に再出発を目指してミネソタ州ミネオポリスに移り住んだ様です。

 

ミネオポリスでは、ラテン系レストランの警備員として働いており、常連客は明るくてよく挨拶やハグをしてくれる人だったとインタビューに答えていました。"gentle giant"(紳士的な巨人)や" big Floyd"の愛称で親しまれていたフロイド氏はミネオポリスに移動して新しく人生を再スタートさせて、努力していた時にこの事件は起こりました。

 

前妻との間には6歳の子供もいて、フロイド氏は娘の事をとても愛していたと、交際している恋人はコメントしています。 

 

 

 フロイド氏は大柄な体型と高い身体能力を武器に高校時代はバスケットボールとアメリカンフットボールの両方で注目を集めたアスリートでした。NBAで14シーズン戦い、引退したスティーブン・ジャクソン氏(Stephen Jackson)とも近い友人でした。

 

友人の理不尽な死を突きつけられ、ジャクソン氏は彼の残された家族を支えていくとメディアの前に立ちました。上の写真はフロイド氏の6歳のお子さんとジャクソン氏が一緒に写っている動画です。

 

フロイド氏の娘ジアナ(Gianna)は”お父さんが世界を変えた”と声をあげています。人種差別や警察の横暴がまだまだ見受けられるアメリカにとって、フロイド氏の事件が引金になり、大きなデモにつながっています。まだ幼い6歳の子供ですが、彼女のこの一言がもっと多くの人たちを動かすことになるでしょう。

 

NBA選手やアーティストたちもデモに参加

 #BlackLivesMatter #CantBreathe などのプラカードを持って人々は街で行進を行っています。過激派が警察と衝突したり、暴力的なデモに発展してしまったケースもありましたが、フロイド氏の弟がデモをするならば平和に行うべきであると強く訴えた事で大きな変化を見せました。

 

人々は手をあげてデモを行ったり、フロイド氏が苦しめられた8分以上を同じようにうつ伏せになり広場で黙祷を続けるなど暴力行為に及ばないデモ行進が続けられています。人々の行動を大きく変えたジョージ・フロイド氏の弟、テレンス・フロイド氏のスピーチを載せておきます(下部に簡単な日本語訳あり)

 

 

(冒頭から一部日本語訳)

『みんなが怒っているのは理解できる。でも誰も俺の半分は怒っていないはずだ。今俺がここで暴力的にならず、ものを爆発せず、地域を無茶苦茶にしていないのに、みんなは何をしているんだ!?実際何もできていないし、そんな事をしても兄貴は帰ってこない。お酒を飲む時と同じように一時的にスッキリするかもしれない。でも後で落ち着いたときに、何をしたかを考え直すよ。俺らの家族は平和的な家族で、信仰も強い、でも怒っているよ。でも暴力的にはならない。実はみんな毎回同じことを繰り返している。警察が暴力を振るったことは過去に何度もあり、そのたびにデモをして破壊行為を繰り返してきた。その結果何も変わっていない!俺らは自分たちで自分たちのものを壊しているだけ、彼らは動かない。今回はやり方を変えよう!選挙が意味がないと思うこともやめよう!これからはすべての選挙に参加して自分たちでリーダーを決めないといけない。、、、、、』

 

この力強いスピーチがデモの方法とこれからのアメリカの政治に影響を与えていくでしょう。一時期前までは選挙権すら与えられていなかったアフリカ系アメリカ人の立場は今でも厳しい環境にあります。

実際にアメリカで暮らして現地の人から話を聞かなければ実感できない事も多いでしょう。労働環境・保険制度・金融制度・地域や子供の教育環境など、人種で差別されている問題点はまだ多く残っています。 

 

アフリカ系2世や3世、移民などが多く暮らしているロサンゼルス・ダウンタウンにも6月4日に多くの人が集まってデモを行い、平等な人権を主張していました(下の写真)。デモには白人・黒人・アジア系・南米系など、人種関係なく多く集まって隣にいる友人や家族のために立ち上がっています。保守派で政治政策を進めているアメリカ政府にとっても今回の事件をきっかけに今後の政策に大きな変化が要求されています。

 

 

  NBA選手たちも、ハーフであったりアフリカン・アメリカンの選手が多く在籍しています。今回の事件を重く受け止め、ステフィン・カリー選手やクレイトンプソン選手、J.R スミス選手、ジョーダン・クラークソン選手、マルコム・ブログトン選手など多くのプレーヤーたちがデモ行進に自ら参加しています。市民たちと共に行進を行い、中にはメガホンを持って大きな声を上げている選手もいました。スポーツ界からは他にボクシングの世界チャンピオン、メイ・ウェザー選手がフロイド死の葬儀のための費用を全額寄付すると声明も上がっています。

 

日本人プレーヤー八村選手が所属するワシントン・ウィザーズもチームのTwitterに日本語で声明をあげて、今回のデモをサポートしています。八村選手を含め、大谷選手や大阪なおみ選手などアメリカで活躍する日本人プレーヤーの多くもSNS上に投稿をして、日本まで問題の深刻さを届けようとしています。

 

音楽業界からは、ドレイクがデモによって不当に逮捕された人々を救済するための保釈金の寄付や、J. Coleは自らチームを引っ張って、マスクを着用してデモに参加していました。詳細の動画やTwitterの投稿を載せておきます。

 

 

アメリカでの人種差別の実態

 

 これまでも、ニューヨークの駅で無抵抗のアフリカ系アメリカ人が警察に銃殺された事件など多くの人種差別問題が起こってきました。アメリカでは、ずっと白人至上主義の観念があって、他の有色人種は差別を受けてきました。その中でも奴隷制度などがあったために黒人の社会的な立場は低く、選挙権が与えられず、バスでは座る席がなく、通う学校すら他の人々と分けられていた過去があります。

 

少しずつ社会の変化や当事者たちの多大な努力があり、人権問題は見直されていますが今だに変わっていない地域もあります。黒人たちの住む地域は貧しいため、社会制度や生活インフラの設置が後回しにされています。地域が発展しないために仕事は過酷な肉体労働ばかりを強いられるなど弱い立場で暮らす人々が地域ごとに固まっているのが現状です。

 

宗教問題や歴史的な背景から、今だに人種差別が残るアメリカの実態について、短い文章では全ては語れません。この問題をきっかけに日本に住む方にも世界には弱い立場の人がいることの実態を知ってほしいと感じました。

 

アメリカに留学していた時に、ブラックカルチャーに深く興味を持ち、色々な資料や音楽を聞いてきたのでまとめて少しずつ説明していきたいと思います。次回は、アメリカができた当時の歴史と奴隷制度が始まったきっかけについてまとめます。よければ読んでください。