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警察の圧力で苦しむアメリカに住むアフリカ系住民達の過去_2000年代

 

 

警察の暴力によって犠牲になったケース

 

 1900年代後半から2000年代、アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の人権は憲法や法律などによって守られる様になってきました。しかし、それとは別で、発展していない生活地域や保健環境など、厳しい生活環境の改善にはまだ至っていません。それと同時に、警察からの暴力に苦しむ住民や事件が多く起こっています。

 

アフリカ系アメリカ人が住む地域は貧困で犯罪が多いという先入観から、彼らは差別的な価値観で見下される立場にある状況が続いています。"Stereotype"(人に対する固定観念)、アメリカで、非常に問題視されているのが、ステレオタイプです。

 

日本人だったら、物静かで、勤労、あまり批判や文句を言わない人種だという固定観念・先入観があります。アフリカ系アメリカ人ステレオタイプは、貧困で、暴力的など、直接話してお互いを理解する前にステレオタイプで個人を判断される事が多々あります。

 

そういったステレオタイプにとらわれない考え方の先に、人種間での平等があると考えられています。たが、まだまだ解決にはほど遠い状況です。なぜステレオタイプが一連の事件につながるのか?それは、アメリカでは警察官が容易に発砲する事が可能だからです。アフリカ系の人々は暴力的な人種であると思われている事で、護身という理由で警察はすぐに携帯している銃を抜き、発砲しています。

 

さらに、アメリカは銃社会で街の人々が武装している事が想定されている為に、警察官は日本より殺傷能力の高い武装を行なっています。ボストンで学生によるテロがマラソン会場で行われた時は、NYの街中に重装備した警官隊が巡回していました。武力で武力を制する考え方が強くアメリカ社会には残っています。

 

 

 

 2000年代に起きた警察による殺傷事件

 

 アメリカの警察による殺傷事件の被害者になっている人の多くは、アフリカ系アフリカ人です。さらに、死亡に至ったケースでも99%の事件で加害者が無罪で処理されてきました。

 

有罪判決に至る事で警察の信用や権威が落ちるために被害者たちや遺族は満足な判決を得れないケースが多くありました。まずは、アメリカで大きな問題になった2件の事件について紹介します。

 

 

 

エリック・ガーナー 2014年絞殺

 

 2014年、逮捕時に絞殺されたエリック・ガーナー氏(Eric Garner)の事件でも警察官は実刑判決に至っていません。

 

事件は2014年7月ニューヨークで起きました。43歳のガーナー氏は、違法たばこ販売の容疑で警察官に逮捕される際に首を締め付けられて死亡しました。当時、反抗する姿勢もなく"I cant breathe"(息ができない)と最後に嘆くも警察官は首を締める行為をやめず、ガーナー氏は死に至りました。

 

裁判では、首締め行為が警察で禁止にされている事にも関わらず実行に移した、ダニエル・パンタレオ氏(Daniel Pantaleo)に事実確認をしましたが、本人は否定していた様です。

 

しかし、犯行当時を映した付近の防犯カメラに実際の映像が残ってました。抵抗しない、息ができないと最後に訴えていたガーナー氏の言葉を無視して首を絞め続けた為にガーナー氏は現場で死亡しました。(YoutubeでEric Garnerと検索をかければ当時のニュースが見られます)

 

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 最終判決では、実刑は下らず、解雇処分と警察官としての年金が受け取れなくなる処分に決まりました。事件後から市民によるデモが発生して、ガーナー氏の最後の言葉" I cant breathe"が書かれたプラカードを持って多くの市民がBlack Live Matter運動を起こしました。それでも実刑判決に至らなかったために家族や関係者の多くに不満が残る結果になってしまいました。

 

 

 

オスカー・グラント3世 2008大晦日

 

 2009年元日、カリフォルニア州で起きたオスカー・グラント氏の銃殺事件では警察による不必要な銃の使用がありました。無抵抗な市民に対する殺傷武器の使用があった為に発砲した警察官、ヨハネス・メセルレは起訴されました。

 

2008年大晦日に友人達と電車で都心に向かっていたグラント氏は、電車の中で暴力行為があったと、通報を受けた警官達によって友人達と強制下車を要求されます。

 

暴力行為と全く関わりがなかったグラント氏達ですが、警察官達は必要以上の尋問をしました。尋問の際には"○igga"などの不適切な差別用語も発せられ、当日現場にいた人々の撮影したビデオには暴力的な行為も映っていました。

 

結果、抵抗しようと叫んでいたグラント氏の背後から警察官が発砲してその場で死亡が確認されました。

 

 警察官達が先に不当な暴力を行使したにも関わらず、裁判当日にはグラント氏一行が先に手を出したと警察側から主張がありました。しかし、当日事件現場にいた人々が撮影したビデオ動画が証拠となり、警察官達の一連の隠蔽行為が明るみで出ます。

 

その上、警察官は"Tsar"(電撃銃)を使って確保する事が第一手段で、実弾の銃の使用はやむおえない事態でのみ許可されています。しかし動画では、ヨハネス氏が最初に取り出したのが、実弾銃で故意に殺害した意図が見られると、殺人罪で訴えられました。

 

だが、判決は過失致死罪でした。故意に殺害したわけではなく現場は混乱状況にあり、その中で当事者の警察官は正気を保てていなかったと判断されました。ヨハネス氏は警察からの解雇と2年の実刑のみで、拘置所で過ごした日にちを減らした約1年すぎを刑務所で過ごして釈放になりました。この事件と判決に対してもデモ行進が行われましたが、結果が変わることはありませんでした。

 

 後にこの事件は映画化されます。ライアン・クーグラー監督、マイケル・B・ジョーダン主演の『Frutivale station(フルートベール駅で)』は2013年に公開されて事件の詳細を再現しています。

 

 

 

アフリカ系住民の生活が描かれた映画

 

 ここからは、アフリカ系アメリカ人たちのリアルな生活が描かれた映画を紹介していきます。言葉で読み取るよりも、実際に映画で描かれた背景や人物で紹介されている方が深く理解できると思うので時間がある際に見てください。

 

留学中に歴史やアメリカ文化の授業で、奴隷制度や差別的な人の扱いについて勉強しましたが、アフリカ系の友人に勧められた映画を見る事で一層理解が深まったと実感したので紹介します。

 

 

 

Boyz n the Hood

 

 

 アフリカ系アメリカ人たちが住む"hood"と呼ばれる地域を高校生達の生活から描いた作品です。実際の生活環境や、彼らの境遇が映し出されている作品として高い評価を得ている永年の名作です。アイス・キューブキューバ・グディングが主演を務めています。

 

アメリカで最初にとりあえずこれを見て俺たちの文化や生活環境を勉強してくれと留学中にバスケットボール仲間に言われた作品です。

 

 カリフォルニア 州ロサンゼルス市コンプトンに住む高校生達が進学を迷う中で、自分たちの生まれた環境、家族のBackground(経歴)に影響されて満足に望む道に進めない厳しい環境が語られています。

 

作品に登場する主人公の父親は弁護士をしながら地域を立て直す為に尽力していて、彼の言葉がとても胸に響きます。

 

映画の途中、主人公と友人達はギャングの抗争に巻き込まれ、銃撃戦へと発展していきます。父親は主人公にアメリカの銃社会の成り立ちについて説明します。

 

アメリカのガンショップ(銃が置いてある店)の多くが貧しい地域の近くにあるのは、そこにいる住民達に自分たちで殺し合いをさせて政府の負担を減らす目的がある、と力説します。その社会で人の役立つ人間になる為には銃ではなく教育が大事だと子供達を導こうとします。

 

様々な事件が生活環境の厳しさを物語っていて、この映画を見る事で彼らの地域や文化について理解を深める事ができます。そこから、今アメリカで起きているデモや人権問題に関する主張の本質的な部分を感じ取る事ができます。

 

実際にロサンゼルス市コンプトンは非常に貧しい街でアフリカ系アメリカ人が多く住んでいます。治安もとても悪く、他の地域の人々はコンプトンにほとんど近づきません。2020年代も状況は未だに変わっていません。

 

(映画予告、英語のみ)

www.youtube.com

 

 

 

Straight Outta Compton

 

 2015年にアメリカで放送された伝説のヒップホップグループの結成から成功までを描いた作品です。『Straight Outta Compton』はNWA(Niggaz With Attitude)に注目した作品です。NWAには、ドクター・ドレイ(Dr. Dre)、アイス・キューブ (Ice Cube)、イージー・E(Eazy E)、MCレン (MC Ren)、DJ イェラ (DJ Yella)が所属していました。

 

警察達の暴力行為から立ち上がる為に、音楽・HipHopカルチャーを作り上げたアフリカ系アメリカ人達。1900年代は、ブルース、ファンク、ソールミュージックが主流で、モータウンを中心にマービン・ゲイ、スティービィ・ワンダーなどが活躍しました。その後、音楽は発展していき、ロックやR&BHipHopなどのジャンルになります。

 

音楽や文章を通して自分たちの考えを伝えていくスキルに優れたアフリカ系の人々は音楽業界に大きな影響を与えてきました。

 

1900年代後半、HipHopミュージックの中で最も成功を収めたのがNWAです。Niggaz With Attitudeは、態度がある黒人達という意味で警察官達の暴力に対しても冷静な態度で、言葉で戦っていく姿勢を示したグループ名になっています

 

 当時、生活環境が厳しかったアフリカ系アメリカ人達は、自分たちの暮らす地域でギャングとなって薬の売買や夜の仕事で生活を豊かにする事が一般的になっていました。

 

その中で音楽を使って貧困から脱す事で人々に希望を与えたのがNWAです。

 

元々、ラップミュージックは、Sugar Hill GangやYoung MCなど、言葉遊びでファンクミュージックやR&Bに近いものが主流でした。ラップとは、韻やライムで言葉にFlow(流れ)とリズムを生み出す音楽です。

 

英語では、ポエム(詩)によくライムが使われていました。古くシェイクスピアの時代からライムでポエムにリズム感と抑揚を与えていました。

 

 アフリカ系の住民達は、人権を主張する時に外で大声を出すと暴力を受ける可能性が高かった1800年代から言葉の代わりに文章や詩などを使って自分達の主張を世の中に出してきたのです。

 

その経緯もあって、文学に対して彼らは熱心的で自分たちの考えや思いを文字や活字で人々に伝える事を大事にしています。ポエムの朗読から発展したのがラップミュージックでHipHopカルチャーです。

 

彼らは1900年代後半からラップ・絵(ペイント)を使って自分たちの文化を世の中に広めました。その高い才能と、スキルが好まれて今では彼らが立ち上がる為の一つの手段になっています。

 

 警察に対して、声を大きく歌い上げたのがNWAです。NWAの歌で有名な『Fuck the Police』は市民を守るはずの警察官達が自分たちには暴力行為や圧力をかけてくる事に対する反感が込められています。

 

NWAがブレイクした事で、多くの人がストリートカルチャーに魅了されて、マイノリティー(少数派)の人々の代わりに声を上げる人が増えました。後にドクター・ドレイは敏腕のプロデューサーとして、エミネムなど多くのHipHopアーティストの成功を助けます。アイス・キューブはコメディアンとして映画界で成功を収めて、ラッパーとしてもグループ脱退後、個人で大きな成功を収めました。

 

過激すぎて、日本では放映する事を禁止する意見も多かった映画ですが、アメリカで実際にあった物語の背景を見る事で、アフリカ系アメリカ人たちの生活と彼らが人生を逆転させる為に音楽にかける強い想いが感じられるはずです。

 

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まとめ

 

 2020年6月から世界中で起きているデモ活動『Black Lives Matter』について理解する為に、アメリカで実際に起こったこれまでの事件を知る事でアフリカ系の人々がステレオタイプで差別されている事実を理解してもらえると思います。

 

憲法や法律があっても、人々の考え方が変わらなければ弱い立場の人々はの境遇は結局変わりません。日本でも先入観や固定観念から人を判断する場合がまだあると思います。横の国で起きている事ではなく、これから外国人がより多くなる環境で暮らしていく私たちにとっても大きく関係する問題です。少しでも多くの人が弱い立場の人々の暮らしを理解して接して行って欲しいです。

 

 

 <=1900年代"Segregation"